胃内視鏡検査(胃カメラ)で
発見できる病気
胃内視鏡検査でわかるのは、胃の病気だけではありません。カメラの通り道となる咽頭、食道、そして胃の先にある十二指腸まで内部からしっかりと観察できるため、消化に関わるさまざまな病気の発見や診断が可能です。 ここでは、胃内視鏡検査でわかる代表的な病気についてご紹介します。
Esophagus/pharynx
食道・咽頭の病気
食道がん
食道は食べ物が口から胃へ送られる通り道です。食道がんは初期症状がほとんどないため気づきにくい上に、ほかの臓器に比べて転移しやすいことが特徴です。さらに、早期に発見できなかった場合は難易度の高い外科手術が必要になり、身体への負担も大きくなってしまいます。
家族に食道がんになった方がいる、喫煙や飲酒の習慣がある、50歳以上などのリスク因子に当てはまる方は特に、内視鏡検査で早期発見に努めることが非常に重要です。
逆流性食道炎・食道裂孔ヘルニア
逆流性食道炎とは胃酸が逆流して食道に炎症を起こす病気です。胸が熱く焼けるような「胸やけ」が代表的な症状ですが、「もたれ感」や「のどの違和感」などの多様な症状があります。重症化すると睡眠障害や食道がんなどのリスクを高めるため、早めの治療が大切です。
食道裂孔ヘルニアとは、胸とお腹を区切っている横隔膜に開いた「食道裂孔(しょくどうれっこう)」という穴からお腹にあるべき胃の一部が胸の方に飛び出してしまった状態です。胃酸や胃の中の食べ物が食道に逆流しやすくなり、逆流性食道炎を引き起こすこともあります。
逆流性食道炎や食道裂孔ヘルニアは、食生活や生活習慣の見直し、体重コントロールなどで改善が期待できますので、早めにご相談ください。必要に応じて薬物治療や外科手術を行う場合もあります。
食道・咽頭乳頭腫
食道や咽頭(のど)にできる良性の腫瘍で、基本的に治療は必要ありません。胃酸による慢性的な刺激が原因と考えられています。
食道静脈瘤
食道の粘膜の下にある静脈が異常に膨らみ、瘤(こぶ)のようになった状態です。肝臓に行くべき血液が行き場を失って食道の静脈に流れ込んだために起こる病気で、肝硬変の患者さまに多く見られます。基本的には無症状ですが、進行し瘤が破裂すると大量出血を起こし命に関わることがあるため、早期に発見して破裂を予防する必要があります。
近年では、内視鏡の先端に装置を装着して瘤を除去する、安全性の高い治療が可能です。
食道粘膜下腫瘍
食道がんは食道粘膜の表面に発生しますが、食道粘膜下腫瘍は粘膜よりも深いところに発生する腫瘍のことです。基本的には良性腫瘍がほとんどなので、内視鏡検査で経過観察を行っていきます。腫瘍が急に大きくなるなど悪性が疑われる場合には、精密検査の上で外科手術が検討されることもあります。
食道異物
誤って異物を飲み込んだり、魚の骨が食道の粘膜に刺さったりした場合に、内視鏡鉗子を使って丁寧に除去します。
Stomach
胃の病気
早期胃がん
がんが胃粘膜の表面近くにとどまっている状態です。この状態であれば内視鏡手術によって完治も期待できます。
また、胃カメラ検査によって胃の老化の程度や、胃がんの最大の原因といわれるピロリ菌の有無を確かめられるため、胃がん予防にも非常に有効です。
進行胃がん
がんが胃壁の筋層よりも深くに進行した状態です。この段階になると内視鏡手術で除去することは難しく、外科的手術や化学療法が検討されます。胃壁には神経がないためこの状態でも痛みが出にくく、気が付かないまま多臓器に転移している方も少なくありません。
胃がんは日本人の死亡原因で上位を占めていますので、なるべく若いうちから定期的に胃カメラ検査を受けることが大切です。
スキルス胃がん
通常の胃がんと異なり、がん細胞が胃の粘膜の下に散らばるように広がって、胃壁全体が硬くなっていくがんです。胃の表面に変化が現れにくい、30~50歳の女性に発症しやすい、進行が早い、転移しやすいなどの特徴があり、早期発見が難しいといわれています。
それでも胃カメラ検査は早期発見に有効な手段になりますので、定期検査を心がけ、ピロリ菌感染があれば除菌治療を行うなどの予防対策が有効です。
胃悪性リンパ腫
白血球の一種であるリンパ球が異常増殖して発生するリンパ系のがんです。全悪性リンパ腫の8%がこの胃悪性リンパ腫といわれています。
ピロリ菌との相関性が高く、胃悪性リンパ腫の方はピロリ菌に感染していることが比較的多いです。早期発見であればピロリ菌の除菌治療が有効な治療法になります。
ピロリ菌に感染していない、または進行している場合は、外科的手術や化学療法、放射線治療などの治療を行います。
胃腺種
胃粘膜に見られる良性の腫瘍です。長い年月をかけて約1割ががん化するといわれているため、良性と確定診断がされた場合も定期的に内視鏡検査で経過観察を行っていきます。
胃潰瘍
胃粘膜が傷ついて、深くえぐれたような傷痕(潰瘍)を形成している状態です。おもな原因はピロリ菌感染と痛み止め(非ステロイド系抗炎症薬)の服用、強いストレスなどです。治療はピロリ菌除菌や服薬の中止、ストレス解消など、原因を除去することが第一選択肢となります。
慢性的な痛みにより服薬をやめられない場合などは、胃酸分泌を抑える薬や胃の粘膜を保護する薬を使用し、食生活の改善などで治療していきます。
胃粘膜下腫瘍
胃粘膜よりも深い層にできる腫瘍です。胃表面の粘膜を押し上げて成長するため、胃粘膜が盛り上がって見えます。その腫瘍が何であるかによって病名が決定され、それぞれに応じた治療が行われます。ほとんどが良性腫瘍ですが、まれに大きくなって悪性化することがあるため、注意深く経過観察を行っていきます。
表層性胃炎
胃粘膜の表面が炎症を起こしている状態で、胃カメラでは線状の赤いただれが確認できます。原因はストレスや暴飲暴食などによる胃酸過多と考えられています。
命に関わるような病気ではありませんが、胃痛を起こしやすいため、食生活や生活習慣の見直しで改善をめざします。
萎縮性胃炎
ピロリ菌感染による慢性的な炎症が長期間続いたことで、胃粘膜が萎縮(老化)して薄くなった状態です。胃カメラ検査では粘膜下の血管が透けて見えます。
さらに萎縮が進むと胃粘膜が腸粘膜の状態に変わる「腸上皮化生」が起こり、がん化することがあります。胃がんの発症リスクを高める病気であることを理解し、ピロリ菌の除菌治療をはじめ適切な早期治療が必要です。
鳥肌胃炎
慢性的な炎症により、胃の出口付近に無数のポツポツが見られる病気です。羽をむしった鳥の皮膚のように見えることから、この病名になったといわれています。
胃痛などの症状が出やすく、特にスキルス胃がんとの関連性が指摘されているため、注意深く経過観察を続ける必要があります。
胃憩室
胃壁の一部が袋状に外に飛び出した状態で、胃カメラでは「へこみ」として確認できます。胃の中の圧力がかかりやすい胃の入口と出口部分によく見られます。
がん化のリスクは低く、症状もほとんどないため、特に治療の必要もありません。
胃アニサキス症
サバやイカなどに寄生する寄生虫「アニサキス」が胃粘膜に入り込むことで、激痛を引き起こす一過性の感染症(食中毒)です。アニサキスは加熱や冷凍で死滅するため、魚介の生食後に腹部の強い痛みを感じたらアニサキス症を疑い、なるべく早く受診してください。
内視鏡鉗子を使って虫体を除去すれば、症状は改善します。
Duodenum
十二指腸の病気
十二指腸がん
十二指腸とは胃で消化された食べ物が送り出される30cmほどの消化管で、小腸の一部です。胃や大腸に比べてがんになる頻度は低いとされています。
十二指腸がんは初期には症状がほとんどなく、腫瘍が大きくなるにつれて腹痛や腹部膨満感、吐き気などの自覚症状が出始めます。外科手術により腫瘍を取り除くことができれば、根治も期待できます。
十二指腸潰瘍
十二指腸の粘膜が傷付いて、深くえぐれたような傷痕(潰瘍)ができた状態です。ピロリ菌感染が原因であることが多く、この病気を繰り返している方も、除菌治療によって再発リスクが大幅に低減します。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)で
発見できる病気
大腸内視鏡検査では、虫垂から肛門まで大腸全体をしっかりと観察することができます。日本人の死因の上位を占める大腸がんをはじめ、消化に関わるさまざまな病気の発見や診断が可能です。
ここでは、大腸内視鏡検査でわかる代表的な病気についてご紹介します。
Large intestine
大腸の病気
早期大腸がん
大腸がんが粘膜の浅い部分にとどまっている状態です。大腸がんは、日本人女性のがん死亡原因の第1位、男性では第3位の病気です(※)。非常に怖い病気に思えますが、じつは早期に発見できれば日帰り内視鏡手術で切除でき、完治も期待できます。さらに、がんになる前の大腸ポリープの段階で切除できれば、がんを予防することも可能です。
※出典:厚生労働省「2022年人口動態統計(確定数)」
進行大腸がん
大腸がんが粘膜の深い層にまで達した状態です。進行大腸がんはリンパ節や肝臓、肺などに転移する可能性が高いため、この場合は注意深く転移の有無も調べます。治療は外科的手術が第一選択となり、あわせて化学療法が行われることもあります。
大腸がんは初期段階ではもちろんのこと、かなり進行しても自覚症状が出にくい病気です。40歳を過ぎたら、特に症状がなくても1年に1度の大腸内視鏡検査をおすすめします。
大腸ポリープ
大腸の粘膜にできるイボのようなできものです。多くが良性の腫瘍ですが、放置しているとがん化するタイプもあります。内視鏡検査で見つかった場合は、30mm未満の大きさであればその場で切除できることが多く、これにより大腸がんの発症リスクを大幅に低減できます。
直腸カルチノイド
「カルチノイド」とは直訳すると「がんもどき」という意味になります。がんに似ていますが、9mm以下の大きさであればほとんどが良性です。ただし、病理診断で転移のリスクが高いものは、手術が必要な場合があります。10mmを超えてくるとがん化して転移する可能性が高まるため、早期発見・早期治療が重要です。
直腸潰瘍
大腸の出口付近にあたる直腸の粘膜に、深くえぐれたような傷痕(潰瘍)ができた状態です。肛門に近いため排便困難や血便などの症状が出ることがあります。重い基礎疾患を有する高齢者に多い「急性出血性直腸潰瘍」では、突然の大量血便が見られます。
大腸脂肪腫
大腸の粘膜下層などに脂肪細胞が過剰に増殖したもので、良性の腫瘍です。多くが無症状でがん化することはほとんどないため、経過観察を行っていきます。
脂肪腫が大きくなって腹痛や便秘などの症状を引き起こす場合は、内視鏡手術で切除も可能です。
大腸憩室症
腸の内壁の一部が袋状になって外に飛び出した状態です。内視鏡では「くぼみ」として確認できます。通常は無症状ですが、憩室が炎症を起こす「憩室炎」になると腹痛や吐き気などの症状が現れます。
憩室を増やさないために食生活の改善に努め、内視鏡検査で大腸の状態を定期的に確認することが大切です。
大腸メラノーシス
通常はピンク色をしている大腸の粘膜が黒くなった状態で、下剤の長期服用が原因です。この状態になると大腸のはたらきが悪くなり、ますます便秘症になる恐れがあります。
まずは食生活を改善し、原因となる下剤の量を減らしていくことで徐々に改善が見られます。
潰瘍性大腸炎
大腸粘膜の炎症により、びらんや潰瘍ができる病気です。下痢や下血、腹痛などの症状があり、症状が落ち着く寛解と再発を繰り返す慢性疾患になります。
国によって「指定難病」に指定されており完治は難しいですが、適切な治療で寛解状態を保つことはできます。
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